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朴婉緒(パク ワンソ) 遺稿散文集「世の中の美しいこと」(セサンエイェップンゴッ)

まだ韓国の原書読書歴のほとんどない私が、おすすめ図書の紹介をするのも
どうかな、とは思うのですが、とてもよかったので。

박완서(朴婉緒 パク ワンソ)(1931~2011)の遺稿散文集
『세상에 예쁜 것』(セサンエイェップンゴッ)
高麗書林の日本語訳タイトルは、『世の中の美しいこと』。

朴婉緒については、韓国文学に関心のある人は、よくご存知だと思うので
省略します。というか、恥ずかしい話、私は語学堂の教科書で朴婉緒の
小説の抜粋を読むまで、知りませんでした。
語学堂の先生から、韓国の代表的作家だと教わり、韓国紙の読書欄を見るとき、
注意していたのです。そうしたら、昨秋(2012年10月)中央日報の記事に、
遺稿散文集の紹介記事が出ていました。
朴婉緒の娘さんが、母親が晩年暮らしていた家で、束になった文章を発見。
あちこちで発表されたものの、本には掲載されていないものでした。
その中から、2000年以降書かれた文や、他の散文を合わせ出されたのが、
この本です。
作家になるまでの自伝的な告白、亡くなった夫や身内への想い、
日常でのふとした出来事、天国の知人友人への追悼文、母国とは……
様々な文章が、この一冊につまっています。
さすが代表的作家だけあって、本屋にいったら目立つ所に置かれてあり、
すぐに買うことができました。

作家や作家の生きた時代背景をよく知っている人が読んだら、きっととても
面白いでしょう。が、背景をまだよく知らない私には、正直、文によっては
よくわからないものもありました。
でも、韓国の原書読書歴の浅い私でも直感的に感じたのが、
「とても素晴らしい文章。きっと、韓国語のお手本のような文って、
こういう文なんだろうな」ということです。
例えば、自宅の庭に出入りするようになった猫たちの話。
なんでもない日常の風景なのに、引き込まれます。
野良猫か飼い猫かわからないが、庭に出入りする猫たち。
なぜか、来客があって、豪華な?生ゴミが出るときにかぎって出没し、
「宴会」を繰り広げ、散らかすだけ散らかしていく。
困り果てた著者は、それならいっそのこと、と庭で猫に餌やりを始めます。
すると、今度は猫たちの、香しい土産物に悩まされるように。
ある日、著者が大事に育てているマーガレットの花壇に、
美しい模様の猫が、「ウーン」のポーズをしているところに遭遇し……
この文は特に気に入って、ノートに書き写し、味わいました。
他にもいくつか、気に入った文があり、それももう一度、書き写して
味わおうと思います。
後日、韓国の国文学科出身の友人にたずねたところ、朴婉緒の文章はとても
いいから、ぜひ読んで、と言われました。

本のタイトルと同じ『セサンエイェップンゴッ』という文もあります。
余命いくばくもない古い友人を、病院に訪ねたときのこと。
友人の息子夫婦が赤ん坊を連れ、看病のため病室に寝泊まりしていました。
朴婉緒は、こんなところに赤ん坊を寝かせたらよくないのでは、
と最初思ったけれど、友人の様子を見ていて考えがかわりました。
衰えた友人が、なぜか微笑んでいるよう。
不思議に思い、友人の視線を追うと、赤ん坊の足の裏に。
おくるみからほんの少し出ている、ちっちゃな足。
その足の指の、なんてかわいらしいこと!
そこに筆者は、命が受け継がれていくことを感じます。
目の前で友人が死にゆこうとしているのに、赤ん坊がいることで、
希望を見出すというか……
これは、私も、認知症の身内や危篤の身内が、赤ん坊だけには反応したのを
目の前で見たことがあるので、とても共感しました。
なんか、じーんときてしまいます。
本のタイトルが、この文から来ているのかどうかはわかりませんが、
もしそうだとしたら、これは、赤ちゃんの足の指のことを指しているので、
「この世で美しいもの」と表現した方が、もしかしたら元の意味に近いかも知れません。


長くなってしまいますが、ついでにひとつ。
FBなどで、韓国語能力試験高級の受験者が、重箱のすみをつつくような単語、
慣用表現をどうやってたくさん覚えるか、書いているのを時々見かけます。
ときには、試験対策問題集を脇に置き、エッセーを読んでください。
そして、気に入った文があれば、書き写してください。
わからない単語があれば調べ、文の良さを味わってください。
どの外国語でも、上級レベルになったら、たくさんの原文に触れることが大事です。
それなくして、ただ問題集や「出る単」(古い!?)みたいな参考書でたくさん暗記
したところで、運用能力はつきません。
私自身の失敗の経験を含めての、話です(失敗談は、後日書きます)。
それにその方が、楽しいですよ。

2013年6月19日 朴婉緒 記事と本


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プロフィール

はこ

Author:はこ
2011年3月~2014年3月の3年間韓国で生活。韓国滞在中の2013年2月に「もっともっと韓国」開始、完全帰国後も大阪からしばらくの間韓国情報を中心に発信してきました。が、帰国後日本、中国語文化圏の情報が増えたこともあり、タイトルを「もっともっとアジア」にしました。より多様な内容で進めていきますので、今後ともよろしくお願いします!
拙著『不思議がいっぱい韓国』もよろしくお願いします!

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